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オハイオ州クリーブランドは ガソリン・スタンドの創始者ロックフェラーを生んだ街。トーマス・エジソンも西方郊外(マイラン)で生まれている。エジソンの名の付く研究所が多い。大学院大学で有名なケース・ウェスタン・リザーブ大学(CWRU)があり、アメリカで最初のノーベル賞受賞者二人を生む。これまでに12人のノーベル賞受賞者を輩出している。現在世界で最も有名な建築家フランク・ゲリーの設計によるCWRUのビジネス・スクールがクリーブランド美術館そばに来夏完成予定。

  クリーブランドは五大湖 (Great Lakes) の一つ、エリー湖の南岸に沿って発達し たオハイオ州北端の都市。別名Forest City。西にデトロイト、東にピッツバー グ、南にコロンバスの各市が存在する。ナイアガラの滝の観光には日帰りが出 来る。クルマで片道3.5時間。エリー湖の北側は(対岸は見えないが)カナダ (オンタリオ州)であるため、クリーブランドはアメリカの北海岸 (西海岸、東 海岸に比して)とも呼ばれる。ノースコーストの名のつく組織や会社が多い。

 

  2000‐2001年の冬はクリーブランドの気象観測開始以来4番目に寒い冬で、 積雪は例年の2倍に達した。合衆国五大湖地域から北東部一帯もその例外ではな く、地球の温暖化は一体どこに行ったかと思われるほどの厳冬であった。 (集中暖房により体感温度は日本より高いが、今年は天然ガスの値上がりで暖房費高騰。) しかしながら、クリーブランド方面の気候変化をみると、長い冬の後の春は格別 で、一年中で最も美しい季節。次いで夏季は比較的に湿気が低く爽やかでしのぎ やすい。そして住みながら通学通勤しながら楽しめる紅葉の秋…と、四季の自然 がすぐそばに存在し、田舎と都会の両メリットを有する街。東海岸の大都市 (ニューヨークやボストン)また西海岸の大都市(サンフランシスコやロスアン ジェルス)と比べると、中西部の住居費は約3分の1から4分の1、生活費も比 較的低く「住めば都」の街である。イギリスのエコノミスト誌の地球温暖化特 集のアメリカを見ると、カリフォルニアやフロリダは年々暑くなり害虫が増えて 人間が住める環境でなくなるといい、未来のアメリカの気候温暖の最適都市は、 何とクリーブランドであるという。

 

  市の人口は昨年の人口調査で50万を切る。郊外を含む大クリーブランドは300万 近い。一時はアメリカの5番目の都市であったが、現在は12番目。

 

  歴史的には鉄鋼業(ピッツバーグに次いで全米2位)・自動車産業(デトロイト に次いで全米2位)・工作機械(発祥地)が盛んであるが、近年は、宇宙航空 産業、ポリマー、金融業、医療産業の都市としても有名である。

 

  産業の発展で富裕者を多く生み、医療と共に文化もその必要性に応じて生ま れ、多方面にわたり花を咲かせた。民間からの多額の寄付により、第一級の文 化施設と内容の質を誇っている。殆どが民間経営である。

 

 

世界に誇るクリーブランド・オーケストラ。タイム誌による全米一位のランク を5ヶ年連続して保持。最近ウイーン・クリーブランド・ベルリンと世界のべ スト・スリー入りを果す。ニューヨークのカーネギーホールで2000年シリーズの オープニングをつとめ、新装なったセべランス・ホールでのガラ・コンサート (昨年1月8日演奏)は2001年の年明けコンサートとしてPBSテレビで全米に紹介 され、珠玉のオーケストラ、本格派のオーケストラと絶賛を浴びる。

クリーブランド美術館東洋芸術部門は全米一。ボストン美術館を抜く。 琳派の屏風絵など日本国宝級の作品も多い。印象派ではピカソの青時代の作品 やルノアールの「少女」が有名。月曜休館、特別展以外は入場無料。昨年より 大改修工事に入った。

自動車博物館(クロフォード・ミュージアム)Western Reserve Historical Society (手短かに説明するとミニ・スミソニアン的博物館)と同居であるが、同じ入場券で両館 が見学できる。入って左が自動車博物館で、クルマの発明開発発展の模様は勿論、 北東部オハイオ製の幻の名車の数々が1階、地階に並んでいる。ホワイト社、 ウィントン社等、当時80社の自動車メーカーが存在した名残り。近い将来ダ ウンタウンに引っ越す噂もある。

ロックンロールの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame and Museum) 有名な建築家 I.M.ペイ氏の設計になるガラス製の三角形の建物。音と映像の全く新しいコンセ プトのミュージアム。アメリカの音楽の歴史を楽しみながら学べる。エリー湖畔 にある。俗称ロック・ホール。ロックンロールという言葉はクリーブランドのデ ィスク・ジョッキーが使い出して有名になり、クリーブランドが他の都市の競合 入札に勝ち残りこのホールの建設となった。開会式にはヨーコ・オノがリボン・ カットで参列。特別展もあり、ヨーロッパからのロックファンの訪問も多い。

Great Lakes Science Center ロック・ホールのすぐ隣にある科学館。コンピュータ で楽しみながらサイエンスが理解できるしくみ。スタッフの実験が見もの。館内 にOmnimax シアターあり。円形天井が映像になり、特別テーマのアドベンチャ ーが楽しめる。ショーは平均45分間。有料。

アーミッシュ(Amish)村 日本人に中々の人気あり。18世紀のスイス系宗教団体 がヨーロッパ での宗教裁判の弾劾を避けてアメリカに渡ったグループ。 文明の利器を使わず今でも馬車(バギー)に乗り、電気・ガスも使わない。 衣装も18世紀のまま、女性はボンネットをかぶり、男性はあごひげに吊りズボ ン姿。ボタンでなくピンを使用。(アーミッシュはハリソン・フォード主演の映画「目撃者」 (Witness)で日本でも一躍有名になった。) スイス・チーズ工場の見学のあと一帯の牧歌風景をまわりアーミッシュの家庭 料理で満腹したあとは、キルト・パッチワークや木工店でのショッピングが 楽しめる。(上記小規模のMiddle Field方面と、1000家族に及ぶHolmes Countyの2箇所が比較的近い。)

ウエストサイド・マーケットクリーブランドの西側は東欧系の移民が多く ハンガリー人は本国の首都ブタペストに次いで二番目に多い。ロシヤ人、バルト 三国、チェコ人、ポーランド人、スロバキア、スロバニア人も多い。クリーブラ ンドのダウンタウンから西に10分位のところにあるこのウエストサイド・マーケ ットは東欧系の食品(肉、ソーセージ、チーズ、パン類)が多く夏場は近郊の農 家の生鮮野菜果物も勢ぞろいし、各国語での買物客で活況を呈している。建物も 大変ユニークで興味は尽きない。また近くには地ビールで知られるGreat Lakes Beerの工場とビヤ・レストランがある。同会社の「エリオット・ネス*」という 琥珀色のビールは日本人にも中々の人気がある。*エリオット・ネス はアンタッチャブル でお馴染みのシカゴの警視捜査官、その後クリーブランドで警視総監を勤めた。

レークビュー・セメタリ−ダウンタウン東、CWRUの裏にリトル・イタリ− があり、その坂を上ったところにある。クリーブランド出身のガーフィールド大 統領の立派なお墓兼記念館がある。ガイド付きツアーあり。ロックフェラーを始 めとするクリーブランドの名士・富豪、また、エリオット・ネスの墓も見つか る。名が示す如くエリー湖を眺望できる。Mayfield Rd.の大通側に正門がある。

 

 

  各文化施設、大学、病院、研究所が集まったユニバーシティー・サークル のすぐ東側にアメリカでも有数の高級住宅街がひろがる。緑豊かな公園の中に 重厚な屋敷、建築スタイルの代表が集まった邸宅が何千軒と続き圧巻である。

 

  ゴルフ場の数が人口一人宛てにすると全米一多いところ。220箇所以上。 安く楽しめるのが特長。ゴルフの他に乗馬、飛行機操縦、ヨットなどが盛んで ある。夏場、特に週末は色とりどりのヨットがエリー湖上に浮かぶ。 メ−ジャ−リ−グ・ベースボール(MLB)といえばクリーブランド・インディア ンズ。5年続けて入場券完売。有名なSin Tax(罪の税金: アルコール類やタバ コに数セントづつの税金が課せられる)により新球場が1994年に完成。 クリーブランド・ブラウンズ(NFL)のフット・ボール球場がエリー湖沿いに一 昨年の夏(1999年8月)に完成。日本からもファンの団体を迎えた。 プロ・バスケットボールのキャバリエ(愛称Cavs)アイスホッケーのバロンズ女子プロバスケットのロッカーズ等々、地元ファンはシーズン毎に 選手の活躍を期待し、一年中スポーツの応援には事欠かない。

 

  第一級の文化と並んで、世界にも有名なクリーブランド・クリニックがあ る。従業員は2万1千人でクリーブランド最大規模のヘルスケア・システムを誇 る。世界90カ国から患者の訪問があり、各国語(日本語を含む)の通訳無料サー ビスが受けられる。世界初の輸血、バイパス、腎臓の透析等は、クリーブラン ド・クリニックで行われた。日本からの臓器移植患者も数人が毎年訪れている。 慶應医学部と定期的に医学技術交換のビデオ会議が行われている。 従来、薬に頼っていた癲癇(テンカン)も世界初の手術に成功したのがクリーブラン ド・クリニック。日本では九州大学がこの技術を応用している。同じくユニバー シティー・サークル内のCWRU構内にあるユニバーシティー・ホスピタルも高度 医学の研究開発で知られており、Rainbow Children's Hospitalは特にその治療で 名高い。また今年は、クリーブランド・クリニック、ユニバーシティー・ホスピ タル、CWRU(ケース)の三者の協力で始められるNortheast Ohioのバイオテッ ク・センター(BioPark)が、クリーブランドの画期的且つ革新的新産業開発とし て各方面から注目を集めている。代表者の選出が終わり、いよいよ場所の選定 に入ると見られる。

 

(記:リン山田邦子)


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